《MUMEI》

「えーと、席どうしよう。」

あと5分で始まるので急いで入る。


「私端っこー。」

安西を挟んで右に俺、左には水瀬が座った。


「少ないですね。前評判良かったのに。」

確かに少ない。
ぱっと見たかんじ半分も入ってないかもしれない。


「私ちょっとお手洗い行ってくるね」

水瀬が席を外す。




「……映画久しぶりかも」


「俺もです。」

確かにあの兄弟達のことを考えると暇無いだろうな。


「あ、弟達は?」


「一番しっかりしてるのと次に手伝えるやつがいるんで。息抜きも必要ですからね、誘ってくれて有難うございます。」

こんなにも素直に喜んでくれていた安西を俺は水瀬に売って(?)しまうのか……罪悪感だ。


「し、幸せにな?」

水瀬も取っ替え引っ替えだけど安西ならきっと大丈夫だろう。


「はい?」

嫁に行く娘を送る父親の気分だった。

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