《MUMEI》
トイレで終わる休み時間って…
休み時間、トイレに行くと寺田が後から入ってきた。
「沢村さぁ、さっきオレの事羨ましいってゆってたじゃん?でも俺はお前の方が羨ましいぜ?」
「俺、羨ましがられる所ないし。」
素っ気ない返事にたじろぐ事なく寺田は続けた。
「お前鏡見てみろよ!なんだその顔!お前はジャニーズか。」
寺田に言われて、目の前の鏡で俺は俺を見た。涼しげな目元に綺麗な鼻筋。薄めの唇の右下には色気ボクロ。ウルフにした黒い髪が肩まである。確かにカッコイイ。自分でいうのもなんだけど…

「どうだ!お前はカッコイイだろ!!」

なんで寺田が自慢気な訳?
「ん〜…てかさ、俺ホストみたくね?」
そういって胸元のボタンを2つ外した。
その時だ。
「本当だ。ホストみたい」横から見た事ない奴が会話に入ってきた。

猫っ毛の癖に軽い天然パーマ。目はくりっとしていて大半を黒目が占めている。まるでチワワだ。鼻は小さいが俺みたく筋が通ってて唇は少し厚くて可愛い顔立ちをしている。身長は俺や寺田より遥かに低い。三人で並んだらまるで親子だ。そいつはニコニコしながら俺を見上げていた。
「あぁ〜…ごめんなさい。つい会話に入っちゃって」上目使いで謝る顔には『ごめんなさい』なんて表情は微塵も無い。でも、ちょっと可愛いじゃん。って俺は変態か!
「てかさ、お前誰?寺田のツレ?」
一応聞いてみた。違うと思ったけど、一応ね。
「いや…俺も知らね。」

やっぱり。寺田のツレは俺のツレでもあるからな。

「あ!もう行かないと。じゃ、後でね。」
そう言うと謎の少年は俺らの前から立ち去った。

「後でって何?」
寺田に尋ねる。
「知るかよ。てか授業始まるぜ?ホストの兄ちゃん」
すっかり忘れてた。開けた胸元を直して俺らは教室に戻ることにした。

誰なんだよ、アイツ。

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