《MUMEI》

「──何者って、只のー‥」

「何か事情があるのなら無理には訊かぬ。だが──」

「分かった」

「‥ぇ」

「只、ここじゃまずいから後でな」

「‥ぁぁ」

 雛菊は頷き、静かに蕎麦を啜る。

 草助は微笑ましげにその様子を見ていた。

「‥何ゆえそんなにも見るのだ」

「ぇ? いや、久し振りだなぁって」

「何がだ‥?」

「お前がそうやって幸せそうにしてる顔見るのさ」

「な、何を言うておるのだ‥」

「ん、どうした?」

「‥ぅ‥、煩い」

 雛菊は俯き、暫し沈黙した。

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