《MUMEI》

 蕎麦屋を出た後、二人は人気の無い路地に身を潜めていた。

「っと‥、何話すんだったっけか」

「お前の身の上だ」

「おー、そうだったそうだった」

「お前‥惚けておるのか‥?」

「いや、そういう訳じゃねぇけどさ」

「なら何ゆえ──‥」

「いや、何て言うかさ、その──‥」

「やはり‥何かあるのだな」

「‥俺は──だいぶ前に貴族の護衛をやってた事があるんだ」

「何‥っ?」

「ははっ、嘘みてぇだろ?」

「いや、済まぬ‥そういうつもりでは‥」

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