《MUMEI》

慌てて男が手を延ばしてくるが、その手が届く前にユウゴはその横を走り抜けた。
後ろで「おいっ!」と声が聞こえる。
振り向くと、女の相手をしていた一人がようやくユウゴの動きに気付き、こちらへ走り出しているところだった。
さらに遠くからはパトカーのサイレンが聞こえてくる。
叫び声を聞いた近所の誰かが通報したのだろう。
「余計なことを……」
思わず呟きながらユウゴは走る。
すると前方から二人の人影が現れた。
 外灯に照らされた二人は、後ろから追いかけてくる二人と同様、小刀を持った若い男だった。
さっきの角で別れた彼らの仲間なのだろう。
後ろから「止めろ!」と声が飛ぶ。
その声を受けて前方の二人は小刀を構え、ユウゴに向かってきた。
ユウゴは目に止まった小道へ慌てて駆け込んだ。

 一人分の道幅しかない小道を必死で走る。
どこに続いているのかわからない道の先には上へと向かう階段がある。
その階段は傾斜が急で段数も多い。
「マジかよ」
さすがにこの階段を全力で駆け上がるのは体力的に厳しい。
ユウゴは後ろを振り向いた。
四人の男が一列に並んでユウゴを追ってきている。
その姿を見てユウゴはある事を思いつき、階段を駆け上がり始めた。

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