《MUMEI》

「僕さー最初女の子と揉めてたじゃん?」

河原は思ったよりきれいだった。
日に照らされて波打つ。
僕が石を爪先で蹴り上げると水面で三回跳ねた。
彼女は空振った。

「そうでしたっけ?」

「あはは、そういうとこ、好きかも……な、」

あ……っぶない、マジ告白しそうになるとは不覚だ。

思いの外、彼女の魅力的な横顔にやられた。
揺らぐことなく水より静かに傍に居る。

触りたい、でも触らない。
触れない。

メビウスの輪の如く表裏定まらない僕の半端な恋心は下らないと君は笑ってくれるかな?

「あーあ、二人でどこまでも流れに添って歩いていたいよ。明日もバイトだあもん。イヤダー!」


「どこまでも……悪くないですね?」

君があまりにも魅力的に笑うものだから、僕はこんな馬鹿になってしまった。


「でも、行きたくないでしょう?」


「瞬間移動なら……」

彼女らしい。


「僕がさ、居なくっても見つけてくれる?」


「タダでですか?」


「好きなもの、なんでもあげる、」


「任せてください」

ゲンキンなとこも好き、気を引くには捨て身じゃなきゃ、僕なんかに振り向いてくれない。

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