《MUMEI》

半分程度まで来たユウゴはピタリと立ち止まり、男たちの方へと振り返る。
彼らは不審そうにその様子を見ていたが、すぐに気付いたように駆け上がる足を止めた。
しかし、すでにユウゴは笑みを浮かべて階段を駆け降りていた。

 先頭の男が口を開けて両手を前に突き出す。
それをしゃがんで避けると、ユウゴはそのまま姿勢を低くして男の腹部を手で思いきり押した。
その反動で男は口を開けたまま姿勢を崩し、後に続いていた三人を道連れに落ちていった。

ユウゴは足を踏み外し、二、三段ほど階段をすべり落ちたが、なんとか縁を掴んで体を支えていた。
「あっぶねー……」
ホッと息を吐きながら立ち上がると、ユウゴは階段の下へと視線を向ける。
男たちは四人が折り重なるように倒れたまま動かない。
あれでは一番下の者は助からないかもしれない。
ため息をつきながら足元に目をやると、先頭の男が落としたのだろう小刀が転がっていた。
ユウゴはそれを拾い上げ、手に持ったまま残りの階段を上がり始める。
ふと視線を横に向けると、少し離れた所で赤いランプが点灯しているのが見えた。
あの場所はさっきまでユウゴがいた公園の近くだ。
あそこに警察が来たということは、同時に追撃隊も来ているに違いない。
「今日は、もう寝られないな」
ぼんやり呟きながら階段を上がりきると、そこには古い木造の建物が建っていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫