《MUMEI》 受信メール数一番・二番「忍さんは、いつもズルイ…」 (こ、こわい…) 去年と同じように朗読ボランティアに一緒に行くと、俺のアパートにやってきた志貴からは、殺気が漂っていた。 …どうやら、初日に俺を遊びに誘いたかったらしい。 (別荘、圏外だったしな) 昨夜確認した受信メール数は、普通じゃなかった。 そのうち志貴は二番目に多かった。 一番は… 「祐也は俺が嫌いなんだ…」 病院前に立っていたこの美形…柊だった。 柊は、今年は俺の友達として朗読ボランティアに参加すると、勝手に決めていた。 「圏外だったんだよ」 「俺、祐也にとって、圏外なんだ…」 「違うよ」 (…ウザイ) 「初日は友達と遊ぶって心に誓ってたのに!」 「いや…」 (誓われても、困る) 言いたかった言葉は、柊が泣きそうだったから仕方なく飲み込んだ。 「祭は一緒に行ってやるからさ」 「…花火も?」 「花火も」 「盆踊りも?」 「盆踊りも」 「誕生日会も?」 「も」 「じゃあ、演劇部の練習も?」 「…も」 (…増えてる) そこでやっと柊の機嫌が直った。 前へ |次へ |
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