《MUMEI》
魅惑の大先生
(それにしても…)


俺は改めて今回の朗読ボランティアのメンバーを見つめた。


この病院は、総合病院だけあって広いから、ボランティアの人数も一番多い。


その中でも、一般病棟担当は


圧倒的に女子が多かった。

彼女達の目当てはわかっていた。


「いた?」

「ううん、でも、多分、挨拶に…」


!!


(来たな)


一般病棟患者が集まった談話室に、緊張が走った。


俺達が担当する小児病棟はもう少し奥にあるから、俺はその様子を横目に見ながら進んでいた。


「美鈴、ちゃんと歩いて」

「は!…あ、すみません」


(さすがというか何と言うか…)


厳一筋の松本の足さえ止めてしまう、抜群の存在感の超絶美形


柊の父親


高山大先生が、そこに立っていた。


おそらく喋ったのはほんの一言か二言。


それなのに


『しばらくボーっとしちゃってなかなか始められませんでした!』


そう、後で俺は報告を受ける事になる。


しかし、それは普通だった。


何故なら


話を聞く患者も同じ状態で


結果的にボランティアには支障は無かったから。

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