《MUMEI》

僕の忌ま忌ましい新しい記憶

僕は、お爺さんと食事を終えて地下道を使い買い物をしていた。お爺さんと僕の手が一瞬離れた隙を見計らって見知らぬ男が僕に袋を被せ掠う。僕はまだ無知であったので油断していた。それだけ地下は治安が悪かったのである。
何処まで掠われたか、息苦しさを覚えた頃、轟音がした。そして、僕は床に落ち、袋からは生暖かい物が滲んだ。自由になった僕は袋から出る。
そこには、赤々と頭が熟れた果物のような物体が転がっていた。僕は訳も分からずただ、立ち尽くし、そして二度目の轟音と共にお爺さんがやってきた。
お爺さんが来れば安心だと、僕は思った。しかし、近づいて来たお爺さんは僕を見ていなかった。両手を挙げたまま、お爺さんの顔は閃光と共に吹き飛ぶ。途端、飛沫が飛び散り、重たい物体が僕に寄り掛かった。

視界が曖昧な中で見た、銃口を向けたままの奴の表情は飛沫が飛び散り、紅い水滴に塗れながらも嗤っていた。


僕は、奴の顔を忘れない。

それは憎しみという名の記憶だ。殺意にも似た、死への憎しみ。それが晴れるならば、僕はあいつの下で、兵器にだってなる。

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