《MUMEI》

「そのネクタイを──ですか」

「うん、リュートはどれがいい?」

「アンリ様が御選び下さる物であるなら──」

「じゃあ、これは?」

アンリ様が御選びになったのは、モノトーンのストライプ。

「試しに付けてみる?」

「──はい」

試着して鏡の前に立つと、

「わぁ、すっごく似合うよ!」

アンリ様はそう仰って下さいました。

「これにしよう」

「あの、済みません‥やはり僕が支払いを──」

「ううん、リュートはお財布しまってて」

「───────」

「命令、だよ?」

「──はい、畏まりました」

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