《MUMEI》
希先輩の進路
(ん? あれは…)


朗読ボランティアが無事に終わり、病院の待合室付近まで戻ってきた俺の視界に見慣れた人物がいた。


「希、来てたんだ」

「うん」


(切り替え早いな)


頼に散々棒読みだと言われ


周りの子供達からもからかわれ


若干落ち込み気味だった柊はすぐに立ち直った。


「誰かのお見舞いですか?」


希先輩は見たところ元気そうだったから、俺は無難な質問をした。


「ううん。さっきまでちょっと進路の相談にのってもらってたの」


(進路?)


「看護婦になるの?」


志貴の質問に希先輩は首を横に振った。


「じゃあ、医者?」


頼の質問にも、希先輩は首を横に振った。


「じゃあ…」

「希は、カウンセラーになりたいんだって」


俺の質問の途中で、柊が正解を言ってしまった。


「この辺で、精神科と心療内科があるのはここだけだから」


希先輩が説明を付け加えた。


「祐希と同じじゃなくていいの?」

「頼…!」


俺は頼を睨みつけたが、希先輩は笑顔で頷いた。


「いろいろ迷ったけど、人を、肉体的にじゃなくて、精神的に支えられるようになりたいと思ったの」

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