《MUMEI》
不機嫌な志貴
(そっか…)


希先輩の目にはもう迷いは感じられ無かった。


「母さんにも賛成されたし」

「なら安心だね」×3


(即答かよ)


改めて志穂さんの存在のすごさを実感してしまった。

そして


柊と希先輩は、図書館で一緒に勉強するからと、病院を出てすぐに別れた。


「志貴、バイトは?」

「う〜ん、ちょっと待って」


志貴は慌てて携帯の電源を入れた。


「…」

「忙しいんだな?」


志貴は無言だったが明らかに困ったような表情で


俺と頼を見た。


松本は、厳の練習を見たいからと学校に向かったし


他の図書委員達も


俺達が希先輩と話している間に先に帰っていた。


「…祐也のアパートまでは一緒に行こうかな」

「遠回りだろ」

「そーそー」


俺は苦笑したが、頼は笑いながら手を振り始めた。


(…馬鹿)


頼の態度に


志貴が不機嫌になったのがわかった。


「暇ならあんたも手伝いなさいよ」

「俺、高いよ?」

「その辺の交渉は父さんとして」

「そんなに俺と祐也を二人きりにしたくない?」

「当たり前でしょ」


(でもなあ…)


実は俺は頼に確認したい事があった。

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