《MUMEI》

ふわ、と、

おれの頬を何かがかすめた。



その何かを目で追う。



視線が捉えたのは―…



「…蓬田…!!」



蓬田もおれの視線を追う。



おれ達の視線の先では、白い光が揺らめいていた。



「夢と、同じ―…」



蓬田が、息をのむ。



白い光は、一度高く跳ねると、



―…すとん、と地面に降り立った。



その姿を、白いネコに変えて。



「―…!!」



おれたちが目を見張っていると、


ネコはおれ達にお辞儀をするような素振りを見せ、



いきなり池に飛び込んだ。





―…ぴぴっ、



11時を知らせる、携帯の無機質な電子音が鳴った。

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