《MUMEI》

「…お前、何もんだ??」



椎名くんが、私の前に一歩踏み出して、『シラユキ』と名乗る少年に尋ねた。




【…時間がありません。簡単に説明させていただきます。
―…僕は―…、俗に天使、と呼ばれる存在です】



少年は、透き通った声で話し始めた。



【…と言っても僕は、まだ修行の身を抜けたばかりで。
―…ある1人の少女を天に連れて行くのが、僕の初めての仕事でした】



寂しそうに微笑んだ少年を見て、
私は1人の少女を思い出した。



病室の、女の子―…



「…もしかして、その子って―…」



私が言うと、シラユキくんは、静かに頷いた。



【彼女の名前は松下つばさ。…僕が初めて会ったとき、彼女の寿命は残り3週間でした】

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