《MUMEI》

女は礼も言わずに札束を男から受け取ると、それを傍らに置いてあった西陣の巾着袋の下に隠した。



男は口惜しそうにそれを睨むだけだった。



女は当たり前のように、勝負の終わった花札を裏返しながらまとめ、一つに束ねてゆく…。



その姿はまるで、男など眼中に無いかの如く…



勝ちを収めることが、あたかも当然のような振る舞いであった。



それもその筈……



女は芸妓であるとともに、花札の勝負を自在に操る"札師"でもあった。



よって目の前の男は金を毟り取る対象の獲物に過ぎない。





…いつもならば…。

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