《MUMEI》

「そうでしたか‥」

「菫はお前に懐いていたからな」

「──済まぬな菫、勝手に城を抜け出して‥」

「姉様が幸せになられるのなら、菫は満足じゃ」

「有り難う、菫」

「‥さて、城に戻るか。父上が待って居られる」

「ぁ‥、あの、菖蒲様」

「どうした、草助」

「‥雛‥、姫様が‥民になられるという事も‥」

「ぁぁ、父上は承知済みだ」

「───────」

「何か不安か、草助」

「ぃ、いや‥、大丈夫です」

「ならば行くぞ」

 菖蒲は家来を呼び、手押し車に乗り込んだ。

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