《MUMEI》

「ですが、アンリ様──」

「信じて。私は大丈夫」

「───────」

「リュート‥?」

「御安心下さい。報酬を控えた所で、僕は居なくなったりしません」

「リュート‥」

「御休みなさいませ、アンリ様」

微笑み掛けると、アンリ様はようやく安堵されました。

「うん、お休み──」

静かな寝息を聞きながら、僕は瞼を閉じました。

仄かに薔薇の香りがして、華奢な両腕が僕の体を抱き締めてきたのは、眠りに落ちる直前の事でした。

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