《MUMEI》

ふと頭上を見上げると、石で作られた大きな鳥居がそびえ立っている。
どうやらここは神社のようだ。
社らしき建物以外何もない。
ここに人は住んでいないらしい。
しかし手入れはされているようで、境内はきれいだった。

 ユウゴはしばらくボーッとその古びた社を見つめていた。
昔、まだ幼かった頃、田舎の神社で遊んでいたことを思い出す。
あの神社には境内の隣に公園も設置されていて子供たちがいつも騒いでいた。
夕方になっても遊ぶことをやめず、母親が探しに来たことが何度もあった。
それほど、あの頃は毎日が楽しかったのだ。
そこまで思い出し、ユウゴは表情を曇らせた。
母親はいったいどうなっているだろう。
無事でいるだろうか。
まさか殺されているなんてことはないだろうが、自分の息子がこんなことになり、精神的につらいだろう。
連絡をしたくても、おそらく実家はすでに監視が置かれているはずだ。
下手に連絡をとっても、母親の迷惑になるだけだ。
「ごめんな」
記憶に映る母親の姿に謝りながら、ユウゴは前へ進み始めた。

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