《MUMEI》 シラユキ 〈おれ〉蓬田は、おれの口を塞いだまま、空をじっと見据えた。 『…取引、だと…?? お前は、自分が何を言っているかわかっておるのか』 地鳴りのような声。 それでも、蓬田は怯まない。 「分かってます。…でも、私は、あなたを許せません」 『…なんだと??』 「ただ、愛する人の傍にいたいと願うことが、 どうして許されないんですか?? ―…あなたも、自分の子どもを愛しているはずです」 『―…掟は、守られればならぬのだ』 「掟、掟って、…どうしてそんなくだらないものに振り回されてるんですか!? ―…命は、そんなに簡単なものじゃない」 蓬田は、そう言っておれの口から手を離した。 「確か―…私達にお詫びをするって言ってましたよね??」 『…ああ。望むものは何でもやろう』 「じゃあ―…」 そう言うと蓬田はシラユキのほうを振り返って、続けた。 「…私達へのお詫びとして、 シラユキくんを許してあげてください」 前へ |次へ |
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