《MUMEI》

『…許す、だと…??』


「そうです。シラユキくんの罪を、許してあげてください。
―…そうするなら、私もあなたを許します」



蓬田が、おれに視線を向ける。



「―…おれも、それならアンタを許す」



蓬田が、おれの言葉に微笑んだ。



『―…お前達、何を言っているか分かっているのか??
望むのならば、巨額の富も、
人の心でさえも手に入れることができるのだぞ』



太い声が、言う。



「…んなもん、自分の力で手に入れる!!」



おれが答えると、声はしばらく沈黙を続けた。



『…よかろう。
本当に、それで良いのだな』



おれと蓬田は、そろって頷いた。



【待ってください!!】



今度は、あの透明な声が響いた。



【僕のせいなんです。…自分の罰は、受けなければ―…いてっ】



蓬田が、シラユキの頭を軽く叩いた。



「…まだ、誰かを愛せるでしょう??
―…生きていれば、これからも誰かを愛せる」



そう言って優しく微笑んだ蓬田を見上げるシラユキ。
碧い瞳からは、きらきらと光る涙の粒が零れ落ちた。



【―…うん。ありがとう…!!】



月を覆っていた雲が、次第に薄れ始めた。

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