《MUMEI》

 襖が開かれ、二人が前に進み出す。

 左右に並んだ家来、雛菊の親族達が、一斉に雛菊と草助を見る。

(おい‥みんな見てるし‥)

「二人、前へ」

「はい。‥草助」

「ぇ、は、はいっ」 

 草助はぎくしゃくとしながら、雛菊の歩調に合わせて進む。

 やがて二人は立ち止まり、雛菊の父──芭蕉が祝辞を述べた。 
 そして芭蕉は、若人に向き直る。

「草助」

「はい」

「娘を頼むぞ」

「はい、必ずや幸福に」

 草助の言葉に、芭蕉は満足げに頷き、今度は娘を見る。

「雛菊」

「はい、父上」

「幸せにの」

「──はい。有り難うございます」

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