《MUMEI》

 式は無事、幕を閉じた。

「あれ、雛菊どこ行ったんだ‥?」

「どうか──なさいましたか」

「ぁ、あの‥雛菊知りませんか‥?」

「その御方でしたら、恐らく裏手の方に」

「裏手‥?」

「はい。行って差し上げて下さいませ」

「貴女って‥ひょっとして、雛菊の付き人ですか‥?」

「はい、風鈴と申します。もう付き人ではございませんが」

 苦笑しつつ風鈴が言うと、若人は申し訳なさそうな表情を浮かべた。

「如何なされました‥?」

「すいません、姫様を‥」

「貴方はあの御方が選んだ殿方。──姫様の全てを貴方に託します」

「ありがとうございます」

 草助は深々と頭を下げた。

 そして、雛菊の居る場所へと向かう。

 しっかりと、前だけを見つめて。

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