《MUMEI》

雨はなかなか止まず──少し冷えてきたように感じます。

「羽織物を御持ちしましょうか」

「ううん、大丈夫」

「──止みませんね‥」

「うん‥」

しょんぼりと項垂れてしまわれたアンリ様。

僕は辺りを見回して、ある物を見付けました。

「オルゴールを鳴らしましょうか」

「オルゴール‥?」

「はい、如何でしょう」

「じゃあ──お願い」

「畏まりました」

螺子を巻き、手を離すと──、優しいメロディが流れ始めました。

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