《MUMEI》

国雄、手土産(菓子詰め合わせ)やら名刺やらしっかり(てか、ちゃっかり?)していた。


「……貴方が小暮さん?まあ……私てっきりマネージャーさんかと。」

国雄しっかりし過ぎだ。
母さんはまさか俺が金髪ホストと同行して来るは思っていなかったのだろう。
落ち着かない様子だったのはそのせいだ。


「……仕事に支障が出る程のスキャンダルを起こしてマネージャーさんが相談しに来たものだとばかり。」

母さんはあながち、間違えてないかもしれない。


「あの……母さん、この人は俺の大事な人です。」

喉が渇いてあまり、上手く話せない。


「まさか、恋人なんてこと無いわよね?」

母さんが怪訝な表情を浮かべる。
また、こんな顔をさせてしまった……


「はい、そのまさかなんです。」

国雄はあっけらかんと言う。


「 ………………帰って 」

腹の底からズシリとくるトーンだ。


「母さん……」


「小暮さん、でしたっけ。……別れて下さる?」

母さんが冷たい、視線を送る。
嫌だ と、口に出せない。


「嫌です。自分、こんなナリしてますが生半可な気持ちで光と付き合ってませんから。」

国雄が、こっそり、手を握ってくれた。
モヤモヤしたむかつきが少し楽になる。


「今が一番大事な時なの。無駄なものを削ぎ落として綺麗にしていないと付け込まれる、互いに足を引っ張ることだわ。」

現実は、痛い。




「か……母さんは……」

吐き気がする。
本当はこんな事を言いたい訳じゃないのに……

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