《MUMEI》

だが、対照的に声は鋭かった。


颯ちゃんが指差した方向には、
傷ついた俺の腕があった。


その傷は、腕だけでなく顔、背中、足………。


至る所にある。


これは、俺が試合や練習中でミスをした時、
父さんから殴られて出来た傷だ。


その傷を、颯ちゃんは痛々し気に見ている。


「蓮翔ちゃんをこうまでする必要あるのか?」


「………。」


「蓮翔ちゃんを自分の都合の良いように使いやがって………。」


「………。」


「蓮翔ちゃんは道具じゃない。

蓮翔ちゃんはアンタの都合の良い道具じゃない。」


「…何が言いたい?」


「蓮翔ちゃんに少しでも自由ってもんがあっても良いんじゃないか?」


「自由だと?」


「そうだ。」


「それは駄目だな。」


「どうしてだよ。」


「今までの苦労が全て無駄になる。」


「なんだそんなことか。」


「?」


何を考えてるんだ?


颯ちゃん……?


「無駄にさせなければいいじゃねぇか。」

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