《MUMEI》

「無駄にさせなければいいだと?」


「そうだ。」


「そんなこと無理に決まっているだろう?」


「どうして?」


「無理なものは無理だ。」


「どうして?」


「だから無理なものは無理なんだ。」


「どうして?」


「お前、ふざけているのか?

幾ら他人だからと言っても、
只じゃ済まさないぞ!」


そう言って、父さんは右手を振り上げた。


危ない颯ちゃん!!


ギュッと目を閉じて、
身を屈めた。


だけど、不思議と鈍い音は聞こえて来なかった。


???


うっすらと目を開けると、
颯ちゃんが軽々と父さんの手をすり抜けていたんだ。


「凄い……。」


そのあまりの俊敏さに、
感心の声を上げてしまった。


颯ちゃんは俺にVサインを送りながら言った。


「最初から無理だって思っているから無理何だろ?」


「違う。」


「そうだろ。

それに蓮翔ちゃんの可能性はどうなる?」


「可能性だと?」


「うん。

アンタが押さえ付けているから、
蓮翔ちゃんだけにしかない才能…可能性が見えないんだろ!!」


「………。」


「それで結果が出ないのは当たり前じゃないか!!」

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