《MUMEI》

「出来たっ」

アンリ様は弾むような声で仰り、僕に絵を見せて下さいました。

「──御上手ですね」

あの虹を、そのまま写し取ったかのような。

「額に入れて──御部屋に飾られては如何ですか」

「この絵を?」

「はい、そういえば──いつでも虹が見られますよ」

「うん、じゃあそうするねっ」

「では、額を御持ち致しますので少々御待ちを」

「待って、私も一緒に行く」

「はい、では──御手をどうぞ、アンリ様」

「うん」

そっと重ねられた小さな手。

少しだけ──大きくなったようです。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫