《MUMEI》 「出来たっ」 アンリ様は弾むような声で仰り、僕に絵を見せて下さいました。 「──御上手ですね」 あの虹を、そのまま写し取ったかのような。 「額に入れて──御部屋に飾られては如何ですか」 「この絵を?」 「はい、そういえば──いつでも虹が見られますよ」 「うん、じゃあそうするねっ」 「では、額を御持ち致しますので少々御待ちを」 「待って、私も一緒に行く」 「はい、では──御手をどうぞ、アンリ様」 「うん」 そっと重ねられた小さな手。 少しだけ──大きくなったようです。 前へ |次へ |
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