《MUMEI》
離した手
『遅い!』
斎藤と橋迫が口を揃えて言った。


二周目を終えて…スッキリ顔の右京と、ヨレヨレのオレの顔を見て…

二人は何かを納得したようで、それ以上は責めなかった。


橋迫が、オレにそっと絆創膏を渡して、自分の首筋を指差した。


『!?…まさか』
オレは慌てて、トイレの鏡を覗いた。


『やっぱり…ハァ…』オレの首筋には、ハッキリとしたキスマーク…絆創膏を貼って隠した。


トイレから出て、自然と右京と手を繋いで〜四人で歩いていた。


その時…
『あ〜先生!』
後ろから、不意に誰かの声がした。


バシッ…
オレは……思わず繋いだ手を…右京の手を…払い…のけ…た。


見上げた右京の顔は……今まで見たこともない程……悲し気だった。


声の主は、オレ達を追い越して、他の奴に話し掛けていた。

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