《MUMEI》
理解し、失う
ぼくは、兄ちゃんのこと、なんで大切に出来なかったのでしょう。
父さんと母さんの中で、学校の中で、悲鳴をあげていたに違いないのに。

今になってわかりました。ちゃんと手を握っていないと、当たり前に居た人が、後ろを振り向いた時には消えてしまうことでしょう。
仲直りがしたいです。

鈴を耳に傾けます。
明日は、お山に行きます。
最後にしようと、思いました。これ以上兄ちゃんにこだわるのは、きっと兄ちゃんに迷惑です。
ぼくが会いたいと願う程、離れていってしまう気がするからです。



樹々の間を縫って風が吹き抜けます。肌寒い季節です。ぶるっと、一度大きく震えました。
マフラーをしてきて正解でした。

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