《MUMEI》

「綺麗に晴れたね──」

「出てみられますか?」

「ううん、今日は中にいようと思うの」

「やはり、御体が──」

「大丈夫。ほら──まだ雨が上ったばかりでぬかるんでるでしょ? それに、中にいたい気分だから」

笑顔でそう仰られては、もう一度御尋ねする事は出来ません。

ですがアンリ様は、御辛い筈なのです。

なのに僕は、何もして差し上げる事が出来ません。

「リュート、大丈夫‥?」

「何か──御要望はございませんか」

「リュート‥?」

「──御命令をどうぞ」

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