《MUMEI》 僕は食器の片付けを終えて、御邸を見回っていました。 小さな人影を見掛けたのは、その時でした。 「──アンリ様‥?」 「ゎ‥っ」 「どうなされたのですか」 「あのね、ちょっと──歩いてみようと思って」 「御一緒させて頂けますか」 「うん。リュートはもうお仕事終わった?」 「はい、少し見回っていたんです。そうしたら、貴女様を御見掛けして──」 「そっかぁ」 「──広い御邸ですよね」 「うん。前は空き部屋なんてほとんどなかったんだけどね──」 前へ |次へ |
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