《MUMEI》
染み入る
お山の薫りは少し透明です。学校の校門まで母さんが送ってくれたあと内緒に裏から抜け出しました。
迷ってはいられませんでした。

「兄ちゃん!」
叫んでみましたが、同じ声が何度も繰り返しに共鳴しただけでした。

その場で寝転がりました。柔らかな葉っぱに囲まれて、埋もれます。揺れる度に聞こえる鈴に聞き惚れてました。
沈んで行きます。


足音です、
誘いの音、白い世界の合図。ここでは悩みも何もありません。
うっかり全てを忘れてしまいそうです。

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