《MUMEI》

社の向こう側まで行くがそこに道はなく、ただ少し高い崖のような壁があるだけだ。
ユウゴはぐるりと境内をまわって別の出口を探す。
しかし自分が上がって来た階段以外に道はないようだった。

どうしたものかとユウゴは鳥居の向こうに見える階段に目をやる。
すると、下の方で誰かの声が聞こえることに気付いた。
何と言っているのかはわからないが、その声の調子は緊迫している。
見つかってしまったのだろうか、それともさっき落ちていった誰かが目を覚ましたのだろうか。
どちらにしても、すぐに誰かがここへ来るだろう。
ユウゴは素早く左右に視線を走らせ、神社の隣にある雑木林に目をとめた。
多少傾斜が厳しいが、歩けないほどではない。
迷う暇なく、ユウゴは林へと駆け出した。

夜の闇に目が慣れていたとはいえ、やはり林の中は暗い。
それでもなんとか手探りでユウゴは急な斜面を登っていく。
雑木林は境内とは違い、手入れがされていないようだ。
木々の感覚が狭いうえに枯れ葉が降り積もっており、足元は滑りやすい。
さらに手には小刀を持っているため、ひどく歩きにくい。
しかし、せっかく手に入れた武器を手放すことはできない。
どこかにおさめようにも、刃の部分を覆う物がないのでそれもできない。
不自由に方手で木を掴みながら上を目指す。
少しして、林の下の方から枯れ葉を踏む音が聞こえてきた。

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