《MUMEI》
忍から得た情報
[忍が、春日グループに勤めてるんだ]


ポツリと言った俺の言葉に、頼は目を丸くした。


(嘘じゃないし)


忍は春日グループ当主の執事だ。


先日、忍と旅行に行った帰り。


俺は、忍があれから全く話題にしなかったエイミーという名前に触れた。


そして、頼の現状についても説明した。


『昔、旦那様とアメリカに出張した先で会った相手に、そういう娘がいた』


忍は、それだけ言った。


だから、俺は相手の名前とエイミーのフルネームを忍から聞き出した。


(そういえば)


忍はエイミーの父親の名前をなかなか言わなかった。


『個人情報だから』


そう言われ、俺は納得したが…


(その割に、エイミーの名前はあっさり口にしたよな?)


[そうか。知ってるのは、それだけ…か]

[あ、うん]


(まぁ、いいか)


落ち着いた頼を見て、現実に戻った俺はそれ以上深く考えなかった。


[…なぁ、頼]

[ん?]

[エイミーって、お前の好きな人?]


俺は、あえて恋人とは言わなかった。


何となく、複雑な事情がありそうな予感がしたから。


[…初恋の人]


頼は泣きそうな顔で笑った。

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