《MUMEI》

20分程経った頃でしょうか。

砂の御城が完成しました。

「ふぅ‥」

「本当の御城のようですね──」

「波が来たら崩れちゃうけどね」

苦笑されながら仰り、アンリ様は御立ちになりました。

それから、手を浸すようにされながら水中を御覧になっていました。

「───────」

「アンリ様、あちらに──‥」

言い掛けて、僕は慌ててアンリ様の前に腕を滑り込ませました。

そうしなければ、その御方は水の中に倒れてしまう所だったからです。

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