《MUMEI》
別人
あの日から変わったんだ。


相変わらず父さんは頑固で、
いちよ納得はしたものの颯ちゃんの意見を受け入れなかった。


だが、以前よりも羽を伸ばせるようになった。


これも全て、颯ちゃんのおかげ。


あの日、俺は颯ちゃんに心から感謝した。


そして、それと同時に、目標が出来た。


“颯ちゃんみたいになりたい”


強くて、勇気があって、明るくて、面白くて、賢くて………。


全てが俺の目標だった。


だけど………。


今此所にいる颯ちゃんはなんだ?


俺の目標だった颯ちゃんとは程遠いじゃないか。


「一体何時からそうなったんだ?」


「俺は変わってない。」


「変わったよ。

あの時の颯ちゃんは………。」


「アレは俺じゃない。」


「え?」


何言ってんの?


悲しげに歪む颯ちゃんの横顔を見ながら、
ハッとした。


そうだ。


あの時から変わったんだ。

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