《MUMEI》

颯ちゃんと出会ってすっかり親しくなった俺達は、
一緒の小学校へ進学した。


毎日のようにふざけ合い、
当然お互いの家を行き来していた。


父さんも、颯ちゃんだけは許したようだった。


ところがある日の朝、
颯ちゃんと一緒に朝練したくて颯ちゃんの家に行ったのに、
追い出されてしまった。


いつもなら笑って颯ちゃんの母さんが出迎えてくれるのに、
この日は颯ちゃんの父さんが出迎えた。


だけどいつもの穏やかな表情とは違った。


物凄く怖い顔をしていた。


そこで思ったんだ。


喧嘩したんだ、と。


小学生で、しかもまだ低学年。


俺が安易に思い付くのは、
それだけだった。


そして、颯ちゃんを励ましてやろうと、
まだ少し肌寒い風が吹く中を走ったんだ。


颯ちゃんにどんな声を掛けてやろう?


軽はずみな言葉を思い描きながら。

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