《MUMEI》

颯ちゃんの母さんが家を出てからだ……。


颯ちゃんがこんな風に、
冷たい表情を見せるのは。


あれからまた俺に心を開いてくれたが、
俺以外の友達には一言も話さなくなった。


それほど颯ちゃんにとって、
家族は大切で、その家族が崩壊したのだから仕方のないことなのかな、
と思って来た。


だけど、今回はどうだろう?


あまりにも酷過ぎやしないか?


自分を人間では無いと思い込むなんて。


それほど、よっぽどのことが起きたのだろうか。


そこまで考えて、
またもや頭に過ぎることがあった。


「俺にも原因あるのか?」


「何故だ?」


「颯ちゃんが、幼い頃俺の試合の応援に来てくれて、
暴行を受けた時があっただろ?」


「ああ。」


「……それも原因があるのか?」


「どうしてそう言い切れる?」


「だってあれから……。」


その日から颯ちゃんはアメリカに行ったんだ。


俺が俯いたままでいると、
しばらく経って颯ちゃんが口を開いた。


「お前のせいじゃない。」

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