《MUMEI》

「そう‥なの?」

「はい。ですから──」

「うん、──ありがとう」

「っ、御待ち下さい、未だ──」

「平気。もう大丈夫だから」

振り向かれたアンリ様の表情には、いつもの優しい、無邪気な笑顔が戻っていました。

「砂のお城──どうなったかな」

「行ってみましょうか」

陽が少し陰ってきたので──、恐らく出ても大丈夫でしょう。

それに、アンリ様が行きたいと仰られるのなら──御希望の通りにして差し上げたいですし。

何より、あの御方に笑顔になって頂けるのが、僕にとっては一番なのですから。

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