《MUMEI》
分裂
「気が済んだらさっさと離れろ。」


溢れて来る涙を仕切りに堪えていると、
低い声が聞こえた。


そこで未だに颯ちゃんの肩に手を置いていたのに気付く。


「早く離れろ!!」


「ご、ごめん。」


慌てて手を放した。


でもそんな乱暴に言わなくても良いじゃねぇか……。


まさか……。


信じたくない一心で顔を上げると、
颯ちゃんは物凄い形相で俺を睨み付けていた。


そして……。


「お前……人間だ。」


語尾を悲しみに揺るがせながら、
そう言った。


やっぱり……。


“涙見せんなよ”


賢ちゃんから忠告を受けた言葉。


こう言う意味だったのか……。


「待ってよ!!

確かに俺は人間だ。


でも颯ちゃんだって……。」


「言うな!!」


先を急ごうと背を向けた颯ちゃんが、
振り替えずに怒鳴った。

「そのあだ名で二度と俺を呼ぶな!!」


「そんな……。」


だんだんと遠ざかる背中を眺めながら、
途方に暮れた。

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