《MUMEI》

「良かった──。まだちゃんと残ってる」

「波はまだ此処まで打ち上げてきてはいないようですね」

「──うん」

アンリ様は屈み込んで、水を御覧になってらっしゃいましたが、水面に波が立ち始めたのに御気付きなり、空に視線を移されました。

「風が──出てきましたね」

「うん、波も立ってきたみたい」

「如何なされますか?」

「もう少し、いようかな──」

「海、御好きなんですね」

「うん、好き」

「綺麗ですよね」

「それに──」

「?」

「元気が出るの」

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