《MUMEI》
向日葵
庭園に咲いた、大輪の花。

アンリ様の身の丈程にも成長したその花は、太陽のようにも見えます。

「立派な向日葵──」

「御好きなんですか、この花──」

「うん」

「そうなんですね」

「夏はあまり外に出られなくて──、でも、お部屋の窓から向日葵を見てると楽しい気分になれたから」

「思い出が御有りなんですね」

僕は日傘を御持ちしながら、アンリ様が陽に当たらないよう気を配っていました。

普段外出をなさらないアンリ様は、陽に御弱いのです。

ですから、御負担にならないよう──陽射を避けて差し上げなければ。

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