《MUMEI》 取り戻す腕に別の物体が絡んでいる、腕、僕には腕が在った。 体の感覚を取り戻してくる。 重なる掌。 僕の手の中に、僕の鈴が渡ってくる。 ひんやりとしている。 ニオイ、土や葉のニオイとは違う僕の家のニオイ。 柔らかい、抱きしめる。 「兄ちゃん以外何も要らない」 僕の大事な弟。 初めて病院で見たとき誓いを立てた。 「なんて、素敵なんだ、ありがとう神様、大切にします!」 僕は正平のつむじのニオイが好き。抱きしめて調度その位置に鼻がぶつかるんだ。 正平がいれば、どんな世界も素晴らしい。 皆、君の誕生を祝福している。 「帰ろう、皆が正平を待っている」 きっと僕は笑っている。正平の指があまりにくすぐったくて。 前へ |次へ |
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