《MUMEI》 夜が更け昌はゆっくり目を開く。 肌寒い。 仰向けでパリパリに乾いた葉の中に埋もれていた。 風がヒュンヒュン音を鳴らしている。 腕の中には人の温もり。 掌には二つの鈴。 学生服は着ていない、 正平をホッカイロ代わりにし、抱き枕みたいにぎゅっとした。 眩しくはない、辺りは真っ暗だからだ。 雲が右から次々製造され左へ引っ張られてゆく。 正平は微かに震えていた。「……兄ちゃん冷たい。」 「……正平、帰ろう」 昌は起き上がる。 「うん、帰る。」 正平は寝そべったままだ。 「……正平?」 昌はそっと覗いた。 穴を掘っている。 「帰ろう」 正平は地面を掘りながら、何処か遠くを見ていた。 「行こう、家に。母さんも父さんも心配してる。」 昌は掘り続ける正平の肩を掴んで自分に向けた。 正平は初めて不思議な言葉を聞いたみたいに、輝かしい笑顔で首を傾け聞いた。 「カアサン?トウサン?」 前へ |次へ |
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