《MUMEI》

「ふぅ──‥」

「御気分は如何ですか?」

「うん、だいぶ楽」

「それは良かったです」

「リュートのお陰だよ。──ありがとう」

その表情は、本当に御元気になられた事を表しています。

「他に何か──御用命はございますか」

「ううん、これで十分だよ」

アンリ様がそう仰られたので、僕は空になったグラスを御下げして、それからまた広間に戻って来ました。

「シャーベット等もございますが、如何なされますか?」

「じゃあ、少しだけ──」

「畏まりました、少々御待ち下さい」

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