《MUMEI》

陽射は幾分穏やかになり、アンリ様は日傘の下に居られなくても大丈夫なようです。

僕は畳んだ日傘を片手に、もう片方の手でアンリ様の手を取って庭園を歩いていました。

果樹園の方にも足を運んでみたり、薔薇園のベンチでひと休みしたり──。

アンリ様と、楽しい時間を過ごす事が出来ました。

「ねぇ、リュート──」

「はい、アンリ様」

「秋になったら──また色々見て回ろうね」

「──はい、勿論でございます」

秋にも、きっとまた素敵な景色を御覧になれますよ、アンリ様──。

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