《MUMEI》
栗鼠
次第に、庭園が秋色に変わってきています。

ケーキの支度をしていた手を止めて、ふと窓を見ると、アンリ様はドングリの木を見上げてらっしゃいます。

気になったので、御側に近付いてみました。

「何か居ますか?」

「あのね、リスがいるの」

「あの枝に居るのがそうですか?」

「うん。降りて来ないかな──」

ドングリを囓っている栗鼠は、なかなか降りて来ようとしません。

アンリ様は、じっと栗鼠の枝を見つめられています。

すると栗鼠は気付いたのか、瞬く間に降りて来たのです。

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