《MUMEI》

傍らでは腰の曲がった地方(じかた:長唄担当)の老芸妓・牡丹が三味線をケースに仕まっていた。



『…儂とて遊女ごときを買うつもりでこの様なことを言っているのではない。


…見合った額は払うつもりだ…


どうだ?…足りないなら幾らでも出すぞ…』



そう言って兼松は更に札束を積み足した。



だが〆華はけして首を縦に振ることは無かった。



そんな無言の押し問答を繰り返すうちに、いつしか札束の数は五つにまで増えていた…。

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