《MUMEI》

   「アーラタ」
誰だ、と同じイントネーション。アラタは後ろから両目を覆われた。

「――――篝、手を離せ」
目から両手が離れる。

駐車場から帰るつもりだったが、車で迎えに来たらしい。黙って乗り込む。

「アラタぁ、遊ぼう?」
篝はアラタの手に纏わり付いた。

「欝陶しい」
顔を窓に向けてのアラタは篝の誘いに無視を続ける。
アラタの手からシャツの第一釦に移動、外し始めた。

「盛りのついた猫みたい。
無様だね?」
窓を相変わらず向いて口を開く。片目の包帯を少し整えた。

「……ニャン。」
露になったアラタの白い首に顔を近づけ篝は鳴いた。動脈を爪でなぞる。

アラタは深い溜息を吐いた。手術用ゴム手袋装着済の手で篝の頭を首に導く。

アラタからの「お許し」に調子を良くし、篝は更に首に唇を絡めた。
舌の先の触感に不快感を持ちながら、力任せにむしゃぶりつく篝を片手で静止する。

抑えてた手も強く握られ座席の隅に押し寄せられた。
「……いっ、アッ」
アラタは縁に頭をぶつけた。彼のプライドが絶対、声声を出すことを許さなかったのに、痛覚に負けてしまう。


「……チッ。」
舌打ち。今のアラタなら篝を迎えに寄越した奴を磔刑にしただろう。

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